2017年読書記録

仕事の合間に時間をつくって本を読んでいる毎日です。

備忘録も兼ねて、昨年読んだ本のなかから、印象に残った2017年刊行の書籍をいくつかご紹介します。「2017年のベスト!」などと高らかに宣言するつもりはないのですが、ここに紹介している本はハズレなしです。ぜひご一読ください。

(小説10、その他3。並びは著者五十音順です。)

 

◎アリハラせんぱいと救えないやっかいさん(阿川せんり、KADOKAWA

北海道大学を舞台に繰り広げられる女子大生(+α)たちの非日常的な日常を描いた作品。まっすぐで清らかなキャラクターばっかりの青春物語にはもううんざり!という方にはぜひ読んでいただきたい。

あと北大出身者は必読。

 

◎獏の耳たぶ(芦沢央、幻冬舎

「悪いものが、来ませんように」、「姉のように」(『許されようとは思いません』収録)など「母」をテーマにした小説を書き継ぐ芦沢さんの新境地。どう新境地なのかは読めばわかります。

読了後の余韻の深さは今年1番でした。

 

◎楽しく学べる「知財」入門(稲穂健市、講談社

著者は「すばらしき特殊特許の世界」を書いた稲森謙太郎氏と同一人物。私はそうと知らずに読みはじめて、最後の最後で「えっ」となりました。

五輪エンブレム騒動など有名な話題を取り上げつつ、本質的な理解を促してくれる最適の知財入門書。

 

◎超AI時代の生存戦略(落合陽一、大和書房)

落合陽一の著書は「魔法の世紀」以来追いかけているため本書も迷わず読了。

本書は短い節で区切られているので、落合氏初読の人にもとっつきやすいと思います。「魔法の世紀」で挫折しちゃった人におすすめ。

 

銀河鉄道の父(門井慶喜講談社

どんなに宮沢賢治に神聖なイメージを抱いている人でも、読めば「賢治、ダメ息子じゃん……」とつぶやかずにはいられない。

それと同時に、自分の胸に手をあてて考える人も多いはず。

宮沢賢治とその父の物語であり、すべての親子のための物語です。

 

◎ミステリークロック(貴志祐介KADOKAWA

名作シリーズ「防犯探偵・榎本」の最新作。表題作のトリックは超絶技巧。これを読んで密室ミステリを書くことを諦めました。

お気に入りは「コロッサスの鉤爪」。

 

◎敵の名は、宮本武蔵(木下昌輝、KADOKAWA

剣豪の連作短編集ということで読む前は「塚原卜伝十二番勝負」(津本陽)などを連想しましたが、本作では「敗者の人生」が強くフィーチャーされているのが特徴。

敗者を描いた作品が好物の私は大満足でした。負け方にもいろんなバリエーションがあり、ぐいぐいと読了。

 

◎火定(澤田瞳子PHP研究所

表紙のクセがすごい!直木賞候補になる前から、書店の店頭で異彩を放っていました。

しかもインパクト満点なのは装丁だけでなく、スペクタクルあり、ロマンスあり、ピカレスクあり、熱い友情あり、成長ありの大エンタテイメント長編です。

 

◎名称未設定ファイル(品田遊、キノブックス)

品田遊さんは1作目「止まりだしたら走らない」も読んでいたため、世界観はわかっているつもりでした。それでも「最後の1日」の行く末は読めなかった。世にも奇妙な物語が好きな人はハマると思います。

それにしても「1日5分の操作で月収20万! 最強ブログ生成システムで稼いじゃおう」はタイトルがずるい。内容気になるに決まってる。

 

◎さよなら、田中さん(鈴木るりか、小学館

2017年一番の衝撃でした。内容のショッキングさという意味ではなく、作者が中学生であるということが。特に表題作は圧巻です。

「作者が中学生」という謳い文句で敬遠している人は、もったいない!

 

◎バッタを倒しにアフリカへ(前野ウルド浩太郎、光文社)

著者の前野氏はザ・研究者の鑑である。

会社員でも趣味人でも、自分の好きな分野の世界に閉じこもりがちなのに、「好きなことをするために外の世界に踏み出す」というチャレンジをした前野氏はすごい。

アフリカでの生活記録としてもめっちゃ面白いです。

 

◎あとは野となれ大和撫子(宮内悠介、KADOKAWA

アニメ化してほしい作品ナンバーワン。

タイトルが秀逸すぎて、文芸カドカワ連載のときから気になっていました。

中東という舞台も魅力的。戦闘シーンよりなにより、ジャミラとの〇〇が心に残りました。

 

◎おもちゃ絵芳藤(谷津矢車、文藝春秋

時代のうねりを背景に、歌川芳藤ら絵師たちの半生を描いた作品。

変革期のただなかでスタイルを曲げない者、器用に波を乗りこなす者。現在のクリエイター事情にも通じる部分があります。「浮世絵」というジャンルが大きく変革したように、「小説」にも変化の波が押し寄せている今にこそ響くメッセージ。

 

以上です。

2017年刊行以外では、

「20世紀最後の戯曲集」(野田秀樹

「サンマイ崩れ」(吉岡暁)

「マインクラフト 革命的ゲームの真実」(ダニエル・ゴールドベリ、リーヌス・ラーション

「塀の中の患者様 刑務所医師が見た驚きの獄中生活」(日向正光)

「数学する精神」(加藤文元)

なども面白かったです。

「裂果」全編掲載しました

事務局から許可を頂き、小島信夫文学賞を頂いた「裂果」をカクヨムに全編掲載しました。約10万字の長編になります。

kakuyomu.jp

小島信夫文学賞

このたび「裂果」という小説で第9回小島信夫文学賞をいただきました。

今後どのように公開されるのか(あるいはされないのか)私にもまだわかりませんが、せっかくなので多くの方の目に触れるような形になるといいな、と思います。

 

この小説の舞台は有機ミカン農家であり、「食の安全」が主要テーマになっています。

書こうと思ったきっかけのひとつは「「ゼロリスク社会」の罠」(佐藤健太郎、光文社)で、非常に読者を考えこませる内容でした。

以前から何となく考えていたもやもやしたことがこの一冊で明確になったような気がして、いてもたってもいられず「裂果」を書きました。

 

連日嬉しいお知らせができ、とてもありがたいです。

今後も精進していきます。

「ポロロッカの子」発売

本日、電子書籍ポロロッカの子」が発売になりました。

だいたいハードカバーで300ページ相当の長さかと思います。

初稿を書きあげてから一年とちょっと。助言をいただきながらどうにか完成することができました。

ノベラボ掲載版を読んでくださった多くの方に御礼申し上げます。

ラストは大幅に改稿していますので、すでに一読された方も楽しんで頂けると思います。

 

最初からずっとイメージにあったのは、男が橋を渡る情景です。

橋の両岸はまったく違う世界で、男はその間に架かる橋を行き来している。

そこから<日系ブラジル人の少年>という造形が生まれました。

いったん思いつくとどんどん派生し、イメージが膨らんでいきます。それでも「橋を渡る」ということだけはずっと離れず頭に残っていて、物語中でもたびたび橋が登場することになりました。

 

この場を借りて参考文献一覧を掲載しておきます。

ポロロッカの子」を読んでさらに周辺知識を深めたいという方がいらっしゃれば、お役に立てば光栄です。

・出稼ぎ派遣工場 自動車部品工場の光と陰(池森憲一、社会批評社

・デカセーギ 逆流する日系ブラジル人(大宮知信、草思社

・新装増補版 自動車絶望工場鎌田慧講談社

・「出稼ぎ」から「デカセギ」へ ブラジル移民一〇〇年にみる人と文化のダイナミズム(三田千代子、不二出版)

・自動車工場のすべて(青木幹晴、ダイヤモンド社

在日ブラジル人の教育と保育の変容(小内透、御茶の水書房)

・新版 在日外国人の教育保障 愛知のブラジル人を中心に(新海英行/加藤良治/松本一子編著、大学教育出版)

・外国人の子どもと日本の教育 不就学問題と多文化共生の課題(宮島喬/太田晴雄編、東京大学出版会

・ルポ 差別と貧困の外国人労働者安田浩一、光文社)

・南米ブラジル人からのメッセージ 素晴らしき夢・出稼ぎ(サイ・メディア研究会/パトリモニオ トーキョウ企画、柏書房)

略歴

小説を書いています。

2016年 第3回ふるさと秋田文学賞受賞「たちきる」

第12回ノベラボグランプリ受賞「ポロロッカの子」

2017年 第8回野性時代フロンティア文学賞奨励賞「うつくしき屑」

電子書籍ポロロッカの子」(ディスカヴァー21)発売

第9回小島信夫文学賞受賞「裂果」

 

〇 「裂果」はこちらで全文公開中です。

kakuyomu.jp

 

〇「たちきる」はこちらで全文公開中です。

common3.pref.akita.lg.jp